2016年12月13日火曜日

自分の時間



 福岡に戻って3日。ネットもCATVも1日で繋がり、荷解きをしながら念願の一人暮らしが再開…のはずなのに、僕は生まれて初めて自分での決断に後悔しています。

 朝起きると「母は眠れただろうか?」、夕方になれば「食事を作れてるだろうか?」、21時頃になると「そろそろ睡眠導入剤を飲む時間だな…」、4時過ぎまで「目が覚めてトイレへ向かう際によろけて怪我でもしていないだろうか?」と、四六時中心配している自分。引っ越し先の建物を出てすぐの銀杏並木を見ると、散歩中に母が形のいい銀杏の葉っぱを選んで拾っていた姿ばかり思い出します。あれだけ待ち望んでいた時なのに、こんなに虚しいとは…。

 業者の人間以外とは話す事もなく、冷蔵庫もレンジもコンロもないため、食事は外食かスーパーで買ったパンやおにぎり。まあ、一応これでも15年以上一人暮らしはしてたので、今更人恋しいってわけでもないんですけど、世間から孤立していると感じてた半年間よりも、以前住んでいた場所からそう離れていない知った街に住んでからの方が実際に孤立しているってのも、皮肉な話だなぁ。

 早く福岡での一人暮らしに戻りたかった僕は、敷金・礼金なしで家賃も以前住んでた所より安い部屋を見つけ、自分のやりたいコトを理由に「自分の時間」を取り戻そうとしてました。あれだけ待ち望んでいた「自分の時間」だったのに、いつの間にか僕の「自分の時間」とは、母と日田で暮らしていた時間になっていた事に、引っ越してから初めて気が付きました。僕、馬鹿なんでいっぺん行動してみないと分からないんですよね。いい歳したおっさんなのに。

 とは言え、おそらくあのまま日田にいる限り、ずっと「福岡での一人暮らしに戻りたい」と思い続けていたのは間違いありません。勢いだけで日田に行ったものの、予想外の出来事の連続で逃げ場がなかった。母も一人暮らしに戻った事で、痺痛が酷くても家事やその他諸々をやらざるを得ないため、これが少しでもいい方向に働いてくれればいいなと。

 で、いきなりこんな事書くと心配して下さった方々には呆れられるでしょうけど、オラ、また日田に戻るっす。ココは2年以内に退去すると家賃3ヶ月分の解約料を取られるため、その分と引っ越し費用プラスアルファをなるべく早く貯め(もうすっからかんなので←いつもそう)、今度はどんな状況にでも正面から向かい合い、母との「自分の時間」を過ごします。仕事のやり方も福岡からスムーズに日田へ移行できる様に固めて。洗濯機もエアコンもないので、夏までにはなんとかそうしたいと考えています。それに気付いただけでも、こっちに戻って来た事は必然だったんでしょう←とか他人事みたいに書いてますが、内心は高い授業料と自分の馬鹿さ加減に悪態ついてますが。

2016年12月9日金曜日

さらば日田



 日田での最後の日は荷造り…と言っても、こっちに来る前に生活必需品はほとんど処分し、持って来た荷物も半分以上がそのままなんですけどね。

 このところ母は痺痛が更に酷くなり、睡眠導入剤の数は増える一方でした。それでも真面目でしっかりした性格の母は、家事を僕に任せている事に後ろめたさを感じたのか、ある朝、いつも僕が行っているゴミ捨てに自分が行こうとし、よろけて狭い玄関内に倒れました。それでなくとも導眠剤の影響でふらふらするのに。慌てて抱き起こすと、「えへへへ…」と力なく笑ってましたが、あの時は本当に心臓が一瞬止まるかと思った。

 導眠剤の影響で夜中になると呆ける母の姿を見る度に、どうしようもない気持ちに襲われ、泣きました。今まで一生懸命真面目に生きてきた母がどうしてこんな理不尽な目に遭わなければならないのか…次第に「このまま自分だけが元の生活に戻るのは逃げなんじゃないか?」と思う様になり、母に「一緒に福岡へ行こう」と話しました。ここんちの前は桜並木になっていて、毎年春になると部屋から見事な桜が見られるんですが、母は「それまでは日田にいたい」と。「その後も症状が変わらず、もう1人で無理だと思ったらそうする」と言ってくれました。

 母は一度も「日田に来て面倒を見てくれ」とか「家事をしてくれ」と僕に言った事はなく、「自分のせいで息子の人生を狂わせてしまった」と考えていました。だけど、僕からすれば、ここまで育ててもらった恩をまだ全然返せていない。だから、日田でのこの半年は「恩返し第一弾」と考え、母が1人での生活にしんどくなったら今度は福岡で一緒に暮らすつもりです。考えてみれば、原因を特定してようやく治療のスタートラインに立ったばかりなんですよね。

 夕方、ちょっと早目の夕食を2人で食べに行き、また荷造りに戻ろうとすると、「薬を飲むと分からなくなるかもしれないから」と、母に「ありがとう」を言われました。「今まで生きてきた中で一番楽をさせてもらった時間だった」と。毎日毎日、自分にできる事を限界までやっても、返ってくるのは自己嫌悪と無力感と非力さの確認。母には「僕がなんとかするんで、何も心配せんでいい」と言い続けてきましたが、自分はホントは全く見当違いの方向に進んでいるんじゃないか?母の時間をいたずらに奪ってるんじゃないか?と毎日が怖く、本当に途方に暮れていました。僕は結局、自分の時間のほぼ全てを使っても何ひとつできなかった。それでも、今は日田に来て、母と一緒に暮らして本当によかったなと思います。

 母もこれからまた1人の生活に戻るため、導眠剤を減らそうとしています。自立神経によるものなので、痛い→我慢→脳が更に痛みを抑えようと意識してしまうっつーのを回避するためには、「どうせ痛いのならやりたい事をやってみよう」と考えるのがいいんだとか。それが最も大変な事は重々分かっているけど、無理なら僕がまた一緒に暮らせばいい。

 久しぶりに鏡を見たら、自分でも驚くくらい白髪が増えてました。まあ、歳のわりには元々多かったけど、それだけ鏡も意識して見てなかったんだなぁ。でも、白くなった髪の毛と、家事で赤切れした手は、日田で暮らした証みたいな気がして、自分ではそんなに悪いもんじゃないと思ってます。

 明日、自分の人生に戻ります。

2016年12月6日火曜日

『シャーロック・ホームズ最後の挨拶』



 引っ越し先の電気、水道、ガスの申し込み手続き完了。転居先は以前住んでたとこと同じく建物全体がJ:COMに加入しており、auひかりは管轄外なので、半年足らずでプロバイダをJ:COMに戻すはめに。auひかりの方はここで解約すると違約金を6万近く取られてしまうため、そのまましばらくこっちに引いておく事に。プロバイダに関しては一連の引っ越しで最もうまくいかなった部分だなぁ。


 『恐怖の谷』、読了。長編は一気に読み進めてしまうなー。『緋色の研究』や『四つの署名』と同様に2部構成になってるけど、今回は第1部と第2部それぞれ独立した物語として読んでも面白く、3つの長編の中で一番好きかも。つーわけで、次巻『シャーロック・ホームズ最後の挨拶』(アーサー・コナン・ドイル著/延原謙訳)を購入。

2016年12月5日月曜日

りびんぐゲーム その4



 昼過ぎに高速バスで天神へ。ほんとは1日(木)が入居予定日だったので、そろそろ不動産屋から鍵だけでも受け取っとかないと不審がられそうなので。生活必需品が全く何もない裸一貫よわくてニューゲームから始まるため、近所のスーパーで掃除道具やトイレットペーパー、ハンドソープなどを買い、軽く掃除。ちょっと遅い昼食は、一時期行き着けだった喫茶店でジャンボカツカレーとレモンスカッシュ。次の日曜日に閉店するという話を聞いたため、鍵の受け取りを今日にしたのでした。ちゃんとタバコが吸える昔ながらの古きよき喫茶店。紫煙の中で食べるジャンボカツカレーもこれが最後かー。

2016年12月4日日曜日

『一杯の珈琲から』



 月刊コミックビームを買う度に気になっていて、いつか単行本で一度しっかり読んでみようと思っていた山川直人先生の『一杯の珈琲から シリーズ小さな喫茶店』、読了。スクリーントーンをほとんど使わずにカケアミで描きこまれた見応えある独特の画風に対し、一話完結の孤独で寂しくリリカルな小さな物語達のバランスが心地よく、冬の寒い夜に布団やコタツにもぐってゆっくり読みたくなる1冊。冬の間に他の山川作品も買って読んでみようと思った。読もう!コミックビーム!


2016年12月2日金曜日

『日々我人間』



 1年ぶりの桜玉吉の新刊『日々我人間』、読了。


 この人だけ敬称略なのは、小学生時分から唯一ずっと読んでるっつーか追いかけ続けてるマンガ家なんで、なんかもう僕にとっては唯一無二の別格作家なの。マンガって自分が歳を取ったら「卒業」しちゃうケースが多いじゃないすか。でも、玉吉作品だけは作者本人の変化を自分も含めたファンは死ぬまで追いかけ見届けるんだろうなー。

 「栄光と挫折」って言や簡単だけど、いやいや、人生がなかなかうまくいかない僕にとって、玉吉作品はどれだけ心の支えになってる事か。それは間違ってもポジティブなもんじゃないんだけど、なんつーか、SNSなんか見てると、往々にしてどこに行っただの何を食っただのそーゆー話題や写真が大半なわけですよ。そーゆーのを見てると、「ああ、自分はこの人達とは生きてる世界が違うんだな」と思う事も1度や2度じゃなく、そうして鬱々とそねんだ気持ちになった時は玉吉作品を読み返し、息を潜めてじっとしているのが最善の方法だと経験上学んだので、僕にとっては全作品がバイブルみたいなもんです。絵柄も相当影響されてるし。

 ロクな本屋がないこっちでも、さすがは天下の週刊文春。どこにでも売ってるので、これだけは毎週欠かさず立ち読みしてます←また立ち読みか。前半は漫画喫茶での生活、後半は伊豆の山荘でのリスやムカデ達との激闘が描かれているので、読もう!コミックビーじゃねえセンテンススプリング!